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映画: グラン・トリノ



本当にいい映画にはなかなか出会えない、ということは経験からわかっている。しかしそのことは、逆にそういった映画に出会えた時には、その映画が何をおいてもいとおしくなる、と言い換えることができる。

いまの自分がそうであるように。

観終わってからもう一週間近く経つというのに、気づくと心がいつも 『 グラン・トリノ 』 を向いている。耳に焼きついたテーマ曲を口ずさむ度に、昔、大学院の食堂から毎朝眺めてたミシガン湖を思い出す。どこまでも続く湖畔とそこを流れる優しい風。水際に打ち寄せる波のように、温かい気持ちが自分の心に寄せてはかえす。

映画は脚本で決まるというのが自分の持論だが、クリント・イーストウッドが初めてこの脚本を読んだ時の受けた衝撃は相当なものだったのに違いない。事実、映画 『 ミリオンダラー・ベイビー 』 に出演したあと、もう映画にはおそらく出演することはないだろうと公言していた彼が、4年半の沈黙を破ってこの映画に出演したことからもそのことは窺える。

彼が何故出演を決めたかは、映画を観ればわかる。

運命、と言えば安っぽく聞こえるかもしれないが、他に適当な言葉が見つからない。彼のこれまでの映画人生は、最後にこの作品に出会うためにあったのではないか。インタビューや関連記事を読むと、イーストウッド自身がそう思っている節がある。

これまで彼が出演した60数作品のうち、近年のものを中心に大半は見てきてたつもりだが、これまで自分はイーストウッドの出演作にも監督作にも大した評価はしてこなかった。世間の評価は知らないが、自分個人では彼の作品では、初期のマカロニ・ウェスタンのいくつかと、『 ザ・シークレットサービス 』 以外は観るべきものがあまりないと思っている。正直駄作も多い。

アカデミー賞を受賞した 『 許されざる者 』 や 『 ミリオンダラー・ベイビー 』 にしても佳作ではあるが、本来それぞれ 『 Scent of a Woman (セント・オブ・ウーマン) 』 と 『 Finding Neverland (ネバーランド) 』 が作品賞を受賞すべきだったところを、映画の配給会社の力の差で押し切ったとしか思えない。特に 『 許されざる者 』 は、作品のどこが評価されたのか若い人には理解できない人も多いだろう。

でも、『 グラン・トリノ 』 を観たあとは、正直そんなことはどうでもいい気持ちになった。

鳥越俊太郎氏が、この映画のDVDの帯に 「 私たち日本人も気づく時が来た。人はいつだって変われる 」 と書いていたが、この映画の中でイーストウッド演じる主人公は人として大きな変化を遂げる。それは人に求められることによってだ。

そのことは時として大きな犠牲を伴うこともある。しかし、物だけを求める者には、たとえそれが身内であっても徹底的に拒否する主人公が、何の関係もない移民の隣人に友人であることを、そして苦しい時にお互いを支えあう仲間として求められた時、彼は全てを差し出すことを躊躇しない。

それは彼自身が、求めていたものでもあるからだ。

これからきっとこの映画を観る機会がある人もいると思うので、内容についてこれ以上は書かないが、ハリウッド的な娯楽アクションムービーや恋愛ものでなく、上質のドラマを観たい気分なら 『 グラン・トリノ 』 を観るといい。

映画を観終わった時、あなたもきっとこの歌を口ずさんでいるに違いない。

So tenderly your story is
そっとやさしく 人生は流れる

Nothing more than what you see or what you've done
いつの間にか 遠く過ぎ去った日々

or will become
そして未来 ・・・

Standing strong do you belong in your skin
しっかりと 大地に足を踏みしめて

Just wondering
想いにふける

Gentle now the tender breeze blows
そよ風がやさしく 吹き抜ける

Whispers through my Gran Torino
俺のグラントリノを

Whistling another tired song
歌い古した メロディのように

Engine humms and bitter dreams grow
エンジン音に重なる苦い夢

Heart locked in a Gran Torino
俺のハートが宿る グラン・トリノ

It beats a lonely rhythm all night long
夜を通して孤独なリズムを刻む

It beats a lonely rhythm all night long

It beats a lonely rhythm all night long



いつかイーストウッドに、素晴らしい映画を作ってくれたお礼を伝えたい。

本当にありがとう。

コメント
何だか物凄く褒めていらっしゃるので、凄く観てみたく思いました。

って以前に仰られていた96時間もまだ観てませんが。

もうレンタルはされてるのでしょうか?

最近はバタバタしているので、落ち着いたら是非観てみたいと思います。

ちなみにイーストウッドの映画は、パーフェクトワールドしか観た事ありません。
って言うか、あれはケヴィン・コスナーの映画って感じですね。
  • チョロ吉
  • 2009/11/14 9:35 AM
チョロ吉さん

コメントありがとうございます。身体の調子はもう大丈夫そうですね。

エントリーでは自分の感じたことをうまくまとめられませんでしたが、本当に素晴らしい映画です。レンタルも出ています。自分は英語版のDVDを持っているのですが、それを観た後、家族に見せたくてすぐ日本版を買いました。

ただ、こういう感動系のドラマがあまり好きではない人もいらっしゃるとは思うので、そういう方には 『 96時間 』 がお勧めかもしれません。

イーストウッドの映画は日本ではあまりポピュラーではないですよね。特に女性でコンスタントに観ているという人には会ったことがないです。アメリカでも知名度と評価の割には彼の映画の売り上げが伸びないんですが、この 『 グラン・トリノ 』 は彼の最大のヒット作になりました。まあ、シンプルで共感しやすいというのもあるんでしょうけど。

よければ今度飯にでも行った時にDVDをお貸ししますよ。
  • Gです
  • 2009/11/14 11:35 AM
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  • 無知の知
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